母は、受験勉強に口出しすることはなかったけれど、参考書を「おもしろい」と言って勝手に読んで線をひいたり、勉強道具にマジックで笑わせるような落書きをするなどの手だしはしてきました。おもしろいだけでなく、母はどんな話も聞いてくれたし、毎日お弁当をつくってくれたり、わたしより先に絶対寝ないなど、優しい気遣いが行動に表れていました。「東大じゃなくてもいいんじゃない?」十月に入り、日々解く問題が基礎編から応用編に移り、どんどん難しくなりました。東大の過去問にも手をつけ始めましたが、解けないことが多くなって、模試の結果で得た自信も再び揺らいでいきました。成績がのびることをずっと期待していたはずなのに、結果が出ても、自分の実力と判定が乖離していると思い込むようになったのです。どうしてもできない方ばかりに囚われてしまい、こんなことで、来年本当に自分は東大を受験するのだろうかと、実感が持てませんでした。そんなある日、塾で授業が終わった後、先生に夏休みに受けた東大模試の結果を見せて話していると、いきなり先生が言いました。「これはもう、東大じゃなくてもいいんじゃない?」先生は地元の国立大学の名前を挙げ、そちらにしたらどうかと勧めました。