人間的な日常生活の真ん中の部分が落ちているのである。西洋の暮らしのなかで育ってきた服飾を、私は職業にしてきた。日本人がつくっているのだから、自然に日本的な表現が出る。それを外国で見せると、わかりやすいわけだ。面白いのは、パリやニューヨークで受けたものは、経済的に貧しい国や戦後の混乱している国でも、拍手喝采を受ける。美しいもの、時代の感覚を表現したクリエーションは、同じ時代に共存しているわけだから、わかりやすいのである。日本人は何を考えているのか、着るものに限らずどんな暮らしをしているのかといった独特の生活文化を、これからは、どんどん紹介する必要がある。日本人はウサギ小屋に住んでいるなどといわれるけれど、そこには私たちの伝統的な文化が生きている。たとえば四畳半の暮らしで、床の間に一輪の花を活け、押し入れから布団を出して寝床をつくり、卓袱台を出してご飯を食べる、本を読む、手紙を書くといった簡素で合理的な暮らしはすごい知恵だと思う。要は私たちの日常感覚を出すことで、お金とは関係ない。