5番目のポイント、インターネット。「手術をしたいが他人には相談できない」「手術したことを知られたくない」という「密室性」がつきまとう美容外科にとって、インターネットは「非常に相性のよい」メディアと言えるだろう。現在の医療法では、診療科名、住所・電話番号、医師の名、診療日・診察時間、入院設備の有無など、広告できる内容を厳しく限定し、「患者を誘引してはいけない」としている。だが、医療法上で言う「広告」とは、「対象が不特定多数の場合」であり、ホームページは「そこにアクセスした人間だけが情報を得られるもの」であるので法的規制のもとにはない、というのが厚生労働省の考え方だ。現在、ウェブ上は何を書いてもおとがめなしの状態となっている。「無料キャンペーン中」、「いまなら○%引き」、「モニター募集」といった言葉が美容外科のホームページの中に飛び交う。ネットの「インタラクティブ性」を活用し、画面上から即座にカウンセリング予約や手術代金の見積もりができたり、手術の空き日がわかるなど、従来のメディアにはない「顧客獲得戦術」も駆使されつつある。インターネットは雑誌などの媒体よりもさらに一歩、客を診療所内部へと招き入れる力が強い。一方、密室性の高い美容外科ゆえの、ネットにおける利点もある。たとえば日本美容医療協会のサイトには、「トッピング治療にご用心!」というこんな忠告が記載されている。「包茎の手術を受けるため大々的に宣伝しているチェーン店のクリニックに行きました。ところが、手術の話をきいてからいざ手術ということで手術台に上がると、医師から『君の亀頭は小さいね。家を建てるのと同じで土台がしっかりしていないとダメだから』と言われ、断れない状態で、コラーゲン注射を数本注射されてしまいました。そのため、手術代が予定していたのとまったく違い、40万円になってしまいました」。男性の手術を中心に、いったん手術台にのってから次々に手術を上乗せしていく「トッピング」の被害が多発している、という。中には金額が200万円におよんだり、ローンによる支払いの金利が38%というケースもあるようだ。頻発するトラブル事例や被害について、即座に情報を流すことができることもネットならではの利点だろう。「包茎手術で高額の料金を請求された」という相談を、約3年間に10件以上受けたという弁護士は「ほとんどがネットにある事例と同じような内容のトラブルでした。中には180万円請求された人もいます。トラブルを起こす側は、派手な広告宣伝をしてチェーン展開しているいくつかのクリニックに集中していました」と言う。あるいは、誰でも自由に匿名で書き込める掲示板を使った「美容外科相談」が、ネットならではの情報提供力を発揮する場合もある。日本美容医療協会のサイトには、1人の質問に対して複数の医師が返答を書き込む掲示板コーナーがあり、複数の医師の意見を「比較」し、「分析」する手がかりが簡単に手に入る。そうした点は、ネットというメディアの長所だろう。「うまく使うことで、これまでは見えなかった中立的な情報を手に入れることができるはずだと期待しています。これまでは『悪貨が良貨を駆逐する』ような、由々しき現状があったが、ネットによって、まじめに診療している『良貨』を見分けることが以前よりも容易になった」(同協会理事長・西山)。しかし中には、派手な広告を批判してきた医師たちと、広告を積極的に打ってきた医師たち、その両方が入り交じって、名前を並べる「美容」サイトもある。美しいデザインに耳触りのよい言葉が羅列され、違いがなかなか判断しにくい。ネット時代、情報が氾濫する状況の中で、ますます情報を選択する力が問われている。
[関連情報]
http://www.audis.info/guide02.html