アメリカで研究される以前には、こうした患者は、ヒステリーとされるほか、しばしば「精神病質」とか「異常人格」とされていました。これらはいかにも切って捨てるような、人情味のない言い方に聞こえます。しかし私は、自分の乏しい経験から言える範囲では、人格の病気(異常)というものは、そう簡単に他人が「治せる」ようなものではないのではないかと思います。「三つ子の魂百まで」というのは、やはり人間の本質を言い当てているのではないでしょうか。実際、五項目に分けて先にあげたような特徴を治療によって変えることができたという経験は、私の場合、残念ながら一例もありません。先にあげた症例の場合も、約三年間、二週間に一回の割合で、私が支持的傾聴を中心とする精神療法を行いながら、臨床心理士が生活史を分析したり、その都度の気持ちを整理するようなカウンセリングを行ったりし、加えて、抗てんかん薬・抗うつ薬・抗不安薬を組み合わせた薬物療法を併用して、私なりに全力を尽くしたのですが、衝動性、怒りやすさ、自殺念慮や自傷傾向、社会適応の悪さなどの基本的特徴に変化はみられませんでした。